言葉で表現できなくなった時、音楽が始まる

ドビュッシーが生まれる1862年以前のオペラ作品ですが、機能和声の中で充実している。革新的では無いのに、新鮮な響きが常に楽しめます。そこがヴェルディ・オペラの分かりやすさではありますが、晩年、ヴァーグナー死語にヴェルディの作風は無長音階を取り入れていきます。
お話に破綻や矛盾、勧善懲悪がないだけでなく台本の良さでしょうか、台詞のやり取りが現代にも時代感を感じさせない。登場人物の心情変化を言葉は表現を尽くしているし、歌、重唱、合唱、管弦楽、バレエのオペラの必要な要素は最上の音楽。演出もしやすいように映画的手法も感じられます。
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第3幕はヴィオレッタの寝室だけでドラマが展開しますが、カーニバルで浮かれる歌や踊りが喧騒として窓の外に聞こえてきます。レコードではこの合唱を遠くから聞こえてくるように録音だけで聴いていてもドラマが理解しやすい。

第3幕への前奏曲 Prelude 3:37

第1幕前奏曲と同じ音楽が、やはり弦楽合奏で始まる。いっそう悲痛な調子で演奏され、アルフレードに愛を告げる音楽はもはや登場しない。切れ切れになったフレーズでひっそりと、弱々しく終わる。前奏曲として同じ音楽を二度使うのは、数あるオペラの中で唯一だろう。同じ音楽が弦楽器だけになるだけで、芯のない不安感を増すものか。ヒロイン、ヴィオレッタの精神状態を表しているようです。

第3幕

季節はめぐり、冬のカーニヴァルシーズン。
ヴィオレッタの寝室で、肺結核が進行していた。窓の内戸も閉ざされカーテンは、表の様子が伺える程度開いているだけ。窓の外を通り過ぎる人々の賑やかな騒ぎと、ひっそりとした室内の様が対照的。ヴィオレッタの生命は尽きかけていた。

財産はクローゼットにわずかに残っているだけ、使用人は去り召使のアンニーナだけが時折世話に訪れる。
溌剌とした第一幕の演技、色っぽい第二幕の演技、そして(はかな)げな第三幕と歌い分けの難しさとともに、ソプラノの見せ場です。オペラ全体の3分の1はある第3幕ですが、ドラマは殆ど動きのないまま。
幕が上がると、ヴィオレッタがベッドに寝ている。彼女はアルフレードの帰りを今か今かと待ちわびている。
「アルフレードは男爵と決闘した後、国外に出た。戻ってきたら、ヴィオレッタとの交際を許そう。」
何度となく読んだジョルジョからの手紙をもう一度読む(ここは歌わずにほとんど朗読する)。
読み終わった彼女は一言「もう遅いわ!」と叫び、過ぎた日を思って歌う(「過ぎし日よ、さようなら」)。
「ああ、もう全ておしまい」と絶望的に歌い終わると、外でカーニバルの行進の歌声が聴こえる。
医師がやってきてヴィオレッタを診察し励ますが、アンニーナにはもう長くないことを告げる。そこにとうとうアルフレードが戻ってくる。再会を喜ぶ二人は、パリを出て田舎で二人楽しく暮らそうと語り会う(「パリを離れて」)。

しかし、死期の迫ったヴィオレッタは倒れ臥す。あなたに会えた今、死にたくないとヴィオレッタは神に訴える。そこに医師や父ジェルモンが現れるが、どうすることもできない。ヴィオレッタはアルフレードに自分の肖像を託し、いつか良い女性が現れてあなたに恋したらこれを渡して欲しいと頼む。
彼女は「不思議だわ、新しい力がわいてくるよう」といいながらこと切れ、一同が泣き伏すなかで幕となる。

あの人を待ってるの、待ってるの、もう誰も来てくれない(シェーナとアリア) Addio, del passato 2:07

Addio, del passato bei sogni ridenti,
Le rose del volto già son pallenti;
L’amore d’Alfredo pur esso mi manca,
Conforto, sostegno dell’anima stanca
Ah, della traviata sorridi al desio;
A lei, deh, perdona; tu accoglila, o Dio,
Or tutto finì.
Le gioie, i dolori tra poco avran fine,
La tomba ai mortali di tutto è confine!
Non lagrima o fiore avrà la mia fossa,
Non croce col nome che copra quest’ossa!
Ah, della traviata sorridi al desio;
A lei, deh, perdona; tu accoglila, o Dio.
Or tutto finì!

さようなら、過去の楽しく美しい夢よ、
顔のバラも蒼ざめてしまった、アルフレードの愛もない、それだけが慰めであり、支えだったのに、ああ!道を誤った女の願いを聞いてください。
どうかお許しください、神よ、御許にお迎えください。
ああ、全て終わった。
喜びも悲しみも、もうすぐ終わりをむかえる、お墓は、全ての者にとって終末なのです!
私のお墓には、涙も花もないでしょう、私の上には、名を刻んだ十字架もないでしょう!
ああ!道を誤った女の願いを聞いてください。
どうかお許しください、神よ、御許にお迎えください。
ああ、全て終わった。

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愛する人よ、パリを離れよう(シェーナと二重唱) Signora! … Che t’accadde? – Parigi, o cara 5:20

Null’uomo o demone, angelo mio,
Mai più staccarti potrà da me.
Parigi, o cara/o noi lasceremo,
La vita uniti trascorreremo:
De’ corsi affanni compenso avrai,
La mia/tua salute rifiorirà.
Sospiro e luce tu mi sarai,
Tutto il futuro ne arriderà.

もう誰も、悪魔であれ天使であれ、私たちを引き離せない。
愛する人よ、パリを離れよう、そして人生を共に過ごそう、これまでの苦しみは報われる、君の/私の健康も甦るだろう。
あなたは私の命であり、光となる、未来は私たちに微笑むだろう。

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