マリス・ヤンソンス、二度目の指揮台登場となった2012年のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート。聞き所は第1部、最初の3曲で、これらはヨハン・シュトラウスの新曲披露となる。それにウィーン少年合唱団を交えての2曲。《鍛冶屋のポルカ》ではヤンソンスが指揮棒の代わりに金床でリードをとった。
1曲目は《祖国行進曲》。ヨハンとヨゼフの兄弟による合作で、父親の《ラデツキー行進曲》の合間に国歌など親しみのあるメロディーが織り込まれています。ハンガリーの旋律も出てきたりと、長いこと演奏される機会が無かったのは”戦気高揚”を意識させるところもあったからかもしれない。
2曲目はワルツ《市庁舎舞踏会でのダンス》。イントロは《コウモリ》序曲。名曲《美しく青きドナウ》のメロディーがちりばめられ、ヨハン・シュトラウス晩年の傑作・・・傑作とは言え、今回が初のお披露目。今後、聴く機会が増えると楽しいのですが。
3曲目はポルカ《あれか、これか》。シュトラウスは喜歌劇からのメロディーを引用してポルカやワルツをたくさん作曲しました。この今年初めて披露される《あれか、これか》は喜歌劇《愉快な戦争》からの引用が多くあります。今では顧みられない喜歌劇作品も、観て観たいものです。
ヨハン・シュトラウスの新曲・・・忘れられていた傑作たち3曲の目玉に続く、《トリッチ・トラッチ・ポルカ》はウィーン少年合唱団との演奏。ウィーン少年合唱団がニューイヤーコンサートに登場するのは1998年以来14年ぶり。オーケストラだけでの《トリッチ・トラッチ・ポルカ》と違って、少年たちの歌声を引き立てる演奏になっていました。
DVDなど、映像で楽しむ方に最近の《ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート》は成りつつありましたが、2曲目を聴いて今年の演奏は気に入りました。
第1部(7曲)、第2部、アンコール(3曲)を加えて全24曲と盛りだくさん。ポルカや行進曲が多く、舞台運びも速やかで演奏も早めで楽しい。戦闘的な音楽もマリス・ヤンソンスの音楽の明るさと平和は与えられるものでは無く、自分たちで気づき直せば良いのだという思いの前に合って、あがなうこと無く笑顔をほころばせているようだ。
昨年のウェルザー=メストの、これがウィーン本来のワルツだ。と言った正攻法とは違う鋭角な音楽ではある・・・メリハリのコントラストが強く、快速でパワフルなところは力強い。けれども、内実にはスマイルの力がある。
2006年には《電話》という曲で、携帯電話をポケットから出してユーモアを見せたヤンソンス。今年は幾重にも音楽がふくよかになっている。音楽だけで聴いても、これから何度も楽しさを与えてくれるCDになりそう。
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