彼女の名は恐らくオールド・ファン達の中でも知っている人は少ないかも知れない。まして彼女のレコードを持っていた人は数える外ないだろうと思われる。
彼女のレコードを年代的に洗ってみると、彼女は1908年から10年にかけて15枚を米ビクターに吹き込んでいるが、最初の総カタログと言われている1914年版には既に8枚しかなく、翌年には更に半減し、1920年以降は前記の一枚となり、24年、レコードが両面になった時には遂に姿を消してしまった。彼女の吹き込んだレコードに就いては「珍品レコード』に譲るが彼女の得意とした『サムソンとダリラ』二曲の他にカルメンの『ハバネラ』や今回の『カード・ソング』等があり、あらえびす先生御愛蔵のシャミナードの「スラブの歌」という魅力あるものもある。
Jeanne Gerville – Réache
ジェルヴィール・レアーシュの生い立ちが他の歌手と異なっていると同様、彼女の声も甚だ特徵を持っている。同じコントラルトでも彼女のような幅のある深い声を私は聴いた事がない。この深い潤いに満ちた声質と、情熱的な一種特有な歌い方は聴く者の心に抵抗し難いものを感じさせる。
ここに選ばれた《サムソンとダリラ》の名唱とカルメンの「カード・ソング」は彼女の特徴のよく表れているレコードで、定めし好評を博するとことと信ずる。
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