歳送りのシンプルな歌合戦として、視聴者全世代が楽しめる歌手が集っていたかつての紅白歌合戦。早い時間帯に若者のための歌手が彩っていたスタイルと、今年の紅白は歌の力で未来を応援するようなNHKのメッセージ性の強い特別番組の感触があった。ふるさと—それは現実の故郷であり、心のふるさとに軸足を置いた『歌がここにある」とされたテーマ通りにかなっていた。
僕たちは音楽で繋がれるんだ
台湾から中継された福山雅治さんの2014年へのメッセージが、その後歌われた「誕生日には真白な百合を/Get the groove」共に2013年の紅白歌合戦を総括していた。それを違う表現で歌われてきたのが泉谷しげるさんの『春夏秋冬』。ぶっきらぼうで乱暴に見える泉谷さんですが、誰よりも音楽の力を絶えず歌ってきた存在だろう。泉谷しげるさんの登場がここだったのは、このふたりの歌うメッセージが伝わりやすいように3時間の数々の歌手の歌のメッセージがあってこそ。
いきなり単独では、これほどはっきりと歌の内容が心に響かないでしょうね。
新しい年の最初に音楽がしてくれる「お・も・て・な・し」。
ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート。今年はダニエル・バレンボイムが指揮をします。前回は2009年に指揮台にたちました。
ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートが新春にテレビで楽しむのが定番となるのは、ウィリー・ボスコフスキーが初めてコンサートをデジタル録音して発売されたレコードが原点。実のところは前日までのリハーサルを編集したものですが、それが全世界に生中継されるまでなりました。
1955年から79年までボスコフスキーが指揮をしていた後を、ロリン・マゼールが7年間引き継ぎますがウィーン・フィルとの中が怪しくなり、ちょうどベルリン・フィルを決裂してウィーン・フィルとの中を深めたかったカラヤンが1979年に登場。これはセンセーショナルでした。
まさか毎年新春にカラヤンの演奏が、無料で中継されるなんて。その期待は毎年入れ替わり指揮者が登板するスタイルになりますが、ニューイヤーコンサートのスタイルを変える事にもなりました。
ボスコフスキーが成し得たことは、毎年新しい曲を発掘すること。シュトラウス・ファミリーのワルツは作曲されて演奏された機会きり眠ったままの楽譜が多く、ウィーン楽友協会のライブラリを整理することが目的でもありました。マゼールは自身、ヴァイオリニストでもありますから上手に継承できたのです。その後は、ライブラリにある楽譜を丹念に勉強するような指揮者のゆとりもないでしょうが、同じ曲でも指揮者の味で違うのがわかりやすいものとなりました。
ダニエル・バレンボイムの音楽からは、楽譜に書かれたドラマが聴こえる。音符が描こうとしたもの、それが情感として響きます。カラヤンはベルリン・フィル、ウィーン・フィルから自分の響きを引き出しましたがバレンボイムはオーケストラの生成りの響きは時に荒々しく露呈させてしまうところがあります。新春の寿ぎを覚ます瞬間も無きにしもあらずですが、年の始の聞き逃せない音楽の放送時間が迫っています。