モーツァルトの楽曲は演奏会に良くプログラムされますが、普通の ― モーツァルトの全作品演奏などのプロジェクトではない ― 演奏会とオペラのレパートリーに登場するモーツァルトの作品は100曲を下回る。ただ、その100曲ほどの曲を聴くだけで、毎日楽しい音楽生活にしてくれる。
この本の邦タイトルは『事典』ですが、序文で著者は「このエッセイ…」と書き出している。そして、「私がモーツァルトの音楽について研究し、教え、執筆し、モーツァルトの音楽を演奏した時に経験してきた楽しさと発見の感覚を、いくらかでも広範な聴衆と分かち合うことだった。」と続ける。
「モーツァルトの生涯の最後の10年には、めったに聴かれない曲が何十もある。また1770年代の数百曲も正当な評価を待っている。」。だから、狭い範囲にとどまらずに敢えて『めったに聴かれない曲』に財宝を見つけるとレジャーに役立てて欲しいと願っている。
完全翻訳じゃない、とすると語弊がありますが、日本のモーツァルト研究は海老沢敏先生が出版した研究が偉大で日本のモーツァルト愛好家には親しまれています。そこで、ニール・ザスロー氏の書物の全訳に補足したり、日本における慣例に表現を変更されている。著作権上の問題から、原書に有る30点を超える図版の掲載は断念され、図版の説明になっている文章は省略されている。
この本の一般的なものと違うところは、『教会音楽』が最初の章となり、『協奏曲』、『交響曲』、『舞曲』、『室内楽曲』― これも、ピアノ伴奏家別の楽器かで章を分けている ― 。最後に『ピアノ独奏曲』となっている。ユニークですが、馴染みの少ない曲を先に読むことが出来るのが特徴で、著者の狙いだろう。
モーツァルトの音楽の重要さの中では、『交響曲』に割かれているページの規模は小さい。モーツァルトの『交響曲』の数は、研究者によって数字が違い。ケッヘルが最初に最後の交響曲『ジュピター』を第41番としたことが定着しすぎている。カール・ベームの交響曲全集は50曲以上録音しているし、60曲から70曲有るとするクリストファー・ホグウッドの交響曲全集のレコードも有る。
ニール・ザスローは『シンフォニー』と表記している。モーツァルトの初期のオペラの序曲は、3楽章形式で作曲された『シンフォニー』あるいは『シンフォニア』です。クリストファー・ホグウッドは、それも『交響曲』として全集に録音しているのです。この本を一般向けのガイドとするために、日本版では『交響曲』に変えてあります。
モーツァルトの手紙が引用されている箇所では、海老沢敏・高橋英郎訳の「モーツァルト書簡全集」全6巻の訳文を使用。楽曲の邦題は小学館の『モーツァルト全集』(これはオランダ・フィリップスのCD全集日本版に付けられたCD-ROMと同じ内容)や海老沢敏監修の『モーツァルト・アーカイヴ』に従っている。また音楽用語は、音楽之友社の『音楽中事典』に準じて変更されています。
モーツァルト書簡全集〈6〉ウィーン時代後期鍵盤楽器を主役にした協奏曲をドイツでは、総じて「クラヴィアとオーケストラの協奏曲」と表記しますが、日本では「ピアノ協奏曲」と表記するのが通例。クラヴィアにはハープシコードやオルガンも含まれるのですが、「ピアノ」として問題の無い箇所は原書の『クラヴィア』と書かれた箇所を『ピアノ』に。一概にピアノに限らない『クラヴィア』や、ピアノ以外の楽器に言及していれば『鍵盤楽器』の表記が使い分けられています。
その他、『ピアノ独奏曲』の章のニール・ザスロー氏の記述には、間違いも多い。全体的に通説で書かれているので日本でのモーツァルト研究では“古い説”とされている箇所がいくつかあります。
エッセイのように読みやすい全作品事典として、ニール・ザスロー氏の筆致は崩さないままに日本のモーツァルト研究者が多く参加して補筆したり、修正をしていて内容は『事典』として充実しています。
いや、句点の位置で意味することの範囲が違います。モーツァルトに限ったことではないけれども、作品の成立した時期が直筆楽譜に年月日の日付が入っていたりして明らかにできる時と、作曲家の手紙や日記で検討をつけている場合がありますね。
この本では、その点を明確に説明してありました。『1779年秋、』は1779年の秋であることが確かな時。『1779年、秋』は1779年であることは確かだが、本当に秋かははっきりしない時と。使い分けられています。この書き分けが他でもどれほど気遣いされているのか、今後、わたしが文章を書く時の心掛けにします。
The post モーツァルトをより深く楽しむための ー エッセイを読むような最新の解説 ー 全作品事典はユニークな存在。 first appeared on Classical Notes.]]>WHITE&GOLD, STEREO 1枚組(160g), Release 1959。
フランス盤ではフランス語で、当盤では英国の俳優、マイケル・フランダースが『ピーターと狼』をナレーションしています。加えて、『動物の謝肉祭』ではアビー・サイモンとヘプシバ・メニューインのピアノ – ユーディ・メニューインの妹である彼女は、兄の伴奏をすることで両親から活動を許されていただけに立役でのレコードは少なく。ソリストとしても華やかな活躍ができた女流ピアニストだっただけに口惜しかった – が楽しみ。
エフレム・クルツは、それほど多くの録音を遺さなかったが、イサドラ・ダンカンの伴奏指揮者として頭角をあらわしたことや、ロシアバレエ団との深いつながりから一般にバレエ指揮者とみなされており、レパートリーや録音の中心はバレエ音楽で占められた。いきおいバレエ音楽の指揮者としては、西側で定評を勝ち得ていた。其の証左としてステレオ黎明期の英国 EMI にチャイコフスキーのバレエ音楽をフィルハーモニアと収録している。ウォルター・レッグもロシア・バレエは、やはり本場の指揮者のほうがカラヤンより売れると考えていた節がある。
フィルハーモニア管弦楽団の黎明期のオーケストラ・トレーナーたちの中でも、ひと際クルツの演奏は地味だが、なかなかの好演。やや固い締まった響きで音楽の運びはオーソドックスだが独特のバランス感覚を持ち合わせた名演。
本来視覚に訴える物語の音楽ですから、レコードで楽しむには“語り口”が欠かせない。この派手な楽曲がクルツの手にかかると何とも可憐に鳴っている。絢爛豪華なカラヤン&ウィーン・フィル盤も良いが、たまには 本場の指揮者でジックリと と思いたくなる演奏です。1959年、ステレオ録音。
品番 | 34-1000122 |
販売価格 | 15,000 円(税別) |
[lastupdated format=”Y年, F j日, l” before=”最終更新日は” after=”です。”] [signoff]The post 本場の指揮者でジックリと ― クルツ指揮フィルハーモニア管 サン=サーンス《動物の謝肉祭》、プロコフィエフ《ピーターと狼》 first appeared on Classical Notes.]]>
南米の音楽が聞こえてきそうなジャケットのデザインだけどロシアの音楽のアルバム。1960年代に発売されたレコードに、亡くなる前のライヴ録音を追加してある。
ネイガウスに支持して同門のリヒテルとは親しかった。第二次世界大戦に翻弄されたピアニストの一人で、中国のハルビンで生まれ上海で活動をしているので日本の軍隊との関わりがあったのだろう。父はスパイ容疑で銃殺、母も収容所送りという悲劇に見舞われる。
当時は現代作品を取り上げるのに勇気のいる状況だったが、彼はプロコフフィエフやシェーンベルク、ヒンデミットなどの作品のソ連初演を行った。1980年代になり、ようやく西側諸国での演奏活動が許可され、世界的に高い評価を受けるようになった。58年ぶりの来日を目前にして、93年に亡くなった。
現代作品も今では特別と感じないピアノのポピュラーなレパトリー。敷居が高いと感じないで聞いて欲しい、モノラルで録音は古さを感じるがアナトリー・ヴェデルニコフの演奏は躍動的で耳を奪う。今、ペトルーシュカやプロコフィエフ、バルトークのソナタを学ぼうと思うピアノの学習者には良い手本となるはずだ。
Igor Stravinsky | Petroushka Suite |
Recording: | 1963, studio recording, Moscow |
Sergei Prokofiev | Piano Sonata No.5 |
Recording: | 1959, studio recording, Moscow |
Galina Ustvolskaya | Piano Sonata No.2 |
Recording: | 16.06.1992, live recording, Pinneberg |
Performer | Anatoly Vedernikov – piano |
Bela Bartok | Sonata for 2 pianos and Percussion |
Performer | Sviatoslav Richter, Anatoly Vedernikov – pianos Ruslan Nikulin, Valentin Snegirev, Andrey Volkonsky – percussion |
Recording: | 02.10.1956, live recording, Moscow |
十代なかばで両親と引き離され、海外での演奏活動が制限された。このことは、ロシア以外では存在すら殆ど知られないことの理由となった。
1980年代に入るとペレストロイカにより、ロシア(ソ連)以外での演奏活動もできるようになり、西側諸国での演奏会は好評を博した。ヴェデルニコフの演奏のレパートリーは広い。バロックからロマン派、印象派、現代音楽にいたるまでの音楽に精通していた。ピアノのペダルの使い方も足さばきの俊敏さに長けた秀逸さで、一つ一つの音が透き通って聞こえるヴェデルニコフのピアニズムは無二である。
WHITE&GOLD, STEREO 1枚組(160g), Release 1959。
フランス盤ではフランス語で、当盤では英国の俳優、マイケル・フランダースが『ピーターと狼』をナレーションしています。加えて、『動物の謝肉祭』ではアビー・サイモンとヘプシバ・メニューインのピアノ – ユーディ・メニューインの妹である彼女は、兄の伴奏をすることで両親から活動を許されていただけに立役でのレコードは少なく。ソリストとしても華やかな活躍ができた女流ピアニストだっただけに口惜しかった – が楽しみ。
エフレム・クルツは、それほど多くの録音を遺さなかったが、イサドラ・ダンカンの伴奏指揮者として頭角をあらわしたことや、ロシアバレエ団との深いつながりから一般にバレエ指揮者とみなされており、レパートリーや録音の中心はバレエ音楽で占められた。いきおいバレエ音楽の指揮者としては、西側で定評を勝ち得ていた。其の証左としてステレオ黎明期の英国 EMI にチャイコフスキーのバレエ音楽をフィルハーモニアと収録している。ウォルター・レッグもロシア・バレエは、やはり本場の指揮者のほうがカラヤンより売れると考えていた節がある。
フィルハーモニア管弦楽団の黎明期のオーケストラ・トレーナーたちの中でも、ひと際クルツの演奏は地味だが、なかなかの好演。やや固い締まった響きで音楽の運びはオーソドックスだが独特のバランス感覚を持ち合わせた名演。
本来視覚に訴える物語の音楽ですから、レコードで楽しむには“語り口”が欠かせない。この派手な楽曲がクルツの手にかかると何とも可憐に鳴っている。絢爛豪華なカラヤン&ウィーン・フィル盤も良いが、たまには 本場の指揮者でジックリと と思いたくなる演奏です。1959年、ステレオ録音。
品番 | 34-1000086 |
販売価格 | 8,000 円(税別) |
[lastupdated format=”Y年, F j日, l” before=”最終更新日は” after=”です。”] [signoff]The post 本場の指揮者でジックリと ― クルツ指揮フィルハーモニア管 プロコフィエフ《ピーターと狼》、サン=サーンス《動物の謝肉祭》 first appeared on Classical Notes.]]>
アメリカ合衆国をメインのターゲットとしてカラヤン&ウィーン・フィルは世界ツアー(この間にカラヤンだけは単身来日)に旅立ち大成功に終わり、英 DECCA は 1959年に EMI と契約の切れたカラヤンと契約。それは英 DECCA 社がウィーンフィルを掌握したことも意味した。正確には既にウィーン・フィルと専属契約を結んでいた英 DECCA が外堀を先に埋めて大将を迎え入れた戦略ととれる。このあと、1965年までカルーショーが後世に伝えるに相応しいカラヤン&ウィーン・フィルの名盤をこの六年間で製作することになる。
オペラの全曲盤の録音の合間には交響曲、管弦楽曲を録音。十数枚の LP レコードで発売され今でも優秀録音で人気だ。ベートーヴェンの7番、ブラームスの1番、ツァラトゥストラはかく語りき、モーツァルトの40番とハイドンの104番、ヨハン・シュトラウスのワルツ、チャイコフスキーのロメオとジュリエットとリヒャルト・シュトラウスのドン・ファン、ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら、クリスマス曲集、ブラームスの3番、チャイコフスキーのくるみ割り人形とグリーグのペール・ギュント、アダンのジゼル、ホルストの惑星、ドヴォルザークの8番、モーツァルトの41番とハイドンの103番、チャイコフスキーの白鳥の湖と眠りの森の美女の順で、すぐに売上に結びつく選曲だ。モーツァルトは39番があれば3大シンフォニーが揃うのに、ドヴォルザークの新世界は聞きたかったな、と思う。散漫にも思えるし、モーツァルトとハイドンの組み合わせは自然としてチャイコフスキーの《ロメオとジュリエット》とリヒャルト・シュトラウスの《ドン・ファン》は度肝を抜く。
しかし、この2曲こそにカラヤンの50歳代の全てが注がれていると聴く。
カラヤンの指揮する曲は概して大胆さや迫力にプラスして、丁寧でかつ美しい。とりわけ、ゆっくりしたテンポでの美しい旋律は、カラヤンの最も得意とする部分だ。
本盤で例えれば、怒濤のような旋律の中で、ぱっと花が咲くように美しいメロディーが流れる。この点にかけては、カラヤンは見逃さず見事に再現している。言い換えればダイナミックレンジが広いとでもいえましょうか。
WIDE BAND WITH GROOVE ORIGINAL RECORDING BY THE DECCA ED1 ORIGINAL, STEREO 1枚組(160g), Release 1961, Stamper 1E/1E。
品番 | 34-1000003 |
販売価格 | 18,000 円(税別) |
SXL シリーズは SXL 2001 から始まる 2,000 番台、SXL 6001 から始まる 6,000 番台がありますが、2,000 番台の全てと 6,000 番台前半のレコードがこれに該当します。レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「FULL FREQUENCY」と書かれている)の幅が 13 ミリメートルあり、ED4 よりかなり広い。そのため、「ワイド・バンド」とも呼ばれています。
また、ラベル上部、10時位置から右向きに「 Original Recording By … 」の文字が見られます。 更に、ラージ・レーベルの外周から約1センチのところに溝( GROOVE )があり、この3つが揃っているものを ED1 ( English Decca 1 )と呼び、SXL の最初期ラベルとなります。このレーベルが、デッカのステレオレコードの中でも、もっともプレスの時期が早く、オーディオファイルたちの憧れの的です。
[signoff]The post 怒濤のような旋律の中でパッと花が咲くように美しいメロディーが流れる ― カラヤン指揮ウィーン・フィル チャイコフスキー《ロメオとジュリエット》、リヒャルト・シュトラウス《ドン・ファン》 first appeared on Classical Notes.]]>演奏の内容は、どんなに時代が移り変わっても、まったく色あせることのない折り紙つきの演奏です。チェコが生んだ大指揮者アンチェルが名門チェコ・フィルと遺した不滅の名録音。チェコ・フィル全盛期の弦楽器の艶と管楽器の豊穣さに加え、アンチェルの鋭くも感情豊かな指揮に唖然とする。
何とも透明で美しい、この指揮者の作品を演奏する事への意欲とともに、非常に良いセンスと、作品の内容への完璧な理解力が備わっている演奏は、感動抜きには語れない。
この演奏は、アンチェル&チェコフィルの黄金時代の頂点の時期であり、オーケストラがとてつもなく素晴らしい。
early elliptical shape dark red “SUPRAPHON STEREO” ORIGINAL, STEREO 1枚組(160g)。
品番 | 34-1000018 |
販売価格 | 12,000 円(税別) |
当時のチェコ・スロヴァキア共和国内で発売された楕円ステレオロゴ濃赤盤。
例えば、チェコフィルハーモニー表記は" Ceska filharmonie "とチェコ語表記です。
[signoff]The post 郷愁を誘う懐かしい真空管の音が詰まっています ― アンチェル指揮チェコ・フィル ドヴォルザーク・交響曲第9番《新世界より》 first appeared on Classical Notes.]]>近年は人気指揮者のレパートリーにない曲なので、英 DECCA の優秀録音には感謝の一言。演奏、録音共にショーソンの交響曲で求めるならこの盤でしょう。
サン=サーンスの3番、フランクの交響曲がお好きな方にはお薦めの名品、作曲家40才の円熟期のフランス風エスプリに満ちた傑作です。アンセルメの指揮で、この曲の魅力を十分に味わえます。
特に第1楽章の終わりは魂の高揚を抑えられなくなる扇動する情熱はベートーヴェンとはまた違ったフランス音楽特有な作品です。
WIDE BAND WITH GROOVE MADE IN ENGLAND ED2 ORIGINAL, STEREO 1枚組(170g), Release 1967,Stamper 1W/2W。
品番 | 34-1000015 |
販売価格 | 20,000 円(税別) |
レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「FULL FREQUENCY」と書かれている)の幅が13ミリメートルあり、ED4 よりかなり広い。そのため、「ワイド・バンド」とも呼ばれています。またラージ・レーベルの外周から約1センチのところに溝( GROOVE )があります。
ここまではファースト・ラベルと同一デザインです。ただし、ラベル上部10時位置の文字が、「 Made in England By … 」に変更になりました。多くの専門家の間で、このセカンド( ED2 )の音質は、ファーストラベル( ED1 )に似ているという意見が多いです。
[signoff]The post 心に染みる美しいフランスのエスプリ ― アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団 ショーソン・交響曲変ロ長調、フランク・交響詩「アイオリスの人々」 first appeared on Classical Notes.]]>英 EMI の偉大なレコード・プロデューサー、ウォルター・レッグとカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団のレコードの数々は、その後のクラシック音楽のレコードの作り方、販売戦略の手段として正に基準となるような仕事であった。
カラヤンは最初の《悲愴交響曲》の録音の時から既に大オーケストラの繊細な単音からダイナミックなハーモニーまでを、いかに効率良くレコードで聞かせることができた。
その天性の才能あってフルトヴェングラーに頭を抑えられてコンサート活動が思うように出来ないカラヤンをレッグはレコード製作に誘った。そのお互いの利害が一致した関係に終止符を打った後の録音。1954 年にドイツ音楽界に君臨していたフルトヴェングラーの急逝にともない、翌 55 年にカラヤンは、ついにヨーロッパ楽壇の頂点ともいえるベルリンフィルの首席指揮者の地位に登りつめた。そうなるとカラヤンはさらなる飛躍を狙った。
もはや機運はカラヤンに向いていた。ウィーン・フィルがすでに英 DECCA と専属契約していたし、ベルリン・フィルを抑えたドイツ・グラモフォンもカラヤンに接触していた。そして何よりも結婚だ。26歳年下のファッション・モデル、エリエッテ夫人と結婚した。もうレッグの手を借りなくても独り立ちできる。時は満ちていた。
一方、レッグは契約更新をしないでいるカラヤンをギリギリまで待った。はっきりした時にはフィルハーモニアにはクレンペラーを迎え入れている。既に内通は通っていたのだろう、親離れするカラヤンを慮って席を開けてくれていたのだ。
このレコードは契約が切れた後、契約に含まれていたレコードの発売総数に不足があったために穴埋めとして録音された。
曲はチャイコフスキーの序曲《1812年》、ベルリオーズの《ハンガリアン行進曲》、リストの《ハンガリー狂詩曲第2番》、シベリウスの《悲しきワルツ》、ウェーバーの《舞踏への勧誘》と雑多でコンセプトに欠けている。おそらく部分的には録音済み、あるいはフィルハーモニア管とリハーサルは済んでいた曲だろうと、わたしは思う。でも、それでいて惜別と新たな門出を祝福するようでも有る。
演奏はオーケストラに合奏の完璧な正確さを要求し、音を徹底的に磨き上げることによって聴衆に陶酔感をもたらせ、さらにはダイナミズムと洗練さを同時に追求するスタイルで出来栄えも隙が無い。決して手抜きをしないのがカラヤンの信条であった。
その「下品な音楽」が嫌いだったカラヤンが、「1812年」を生涯2度も録音している。どちらも品数を厚くしたいレコード会社からの熱望だっただろう。「それほど説得するなら、ここまで破天荒でもいいよね」とでも言ったかのように、聴いてみると傑出した下品さに仕上がっているが、それがまた爽快だったりする。大衆ウケする曲ばかりを並べたレコードなのだ。
BLUE&SILVER ORIGINAL, STEREO 1枚組(160g)。
品番 | 34-1000000 |
販売価格 | 12,000 円(税別) |
ターコイズ色に銀色の網模様、黒文字でデザインされました。SAX2252 からのレコードではこのレーベルデザインがオリジナルです。
私たちが知りうる中で、これより前の番号でブル-・シルバーが存在しないもの( SAX2526、2532 )もありますが最後の番号は SAX2538 となります。
[signoff]The post 出来栄えは傑出した下品さ ― カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団 チャイコフスキー・大序曲「1812年」 Op.49 他 first appeared on Classical Notes.]]>1975年初発。
歌劇《さまよえるオランダ人》から序曲
楽劇《ラインの黄金》から「神々のワルハラへの入場」
歌劇《タンホイザー》第2幕から大行進曲
歌劇《ファウスト》から序曲
歌劇《リエンツィ》から序曲[/one_half][one_half_last]
[/one_half_last]
見通しの効いたワーグナーです。
演奏もですが、録音も高解像度でワーグナーのおとぎ話の要素を音で見せてくれているような視覚的に訴えるところがあります。
ワーグナーの情念、エロティカルなところは後退しきっていますが、その点食い足りなさ、カタストロフィー、欲情のはけ口は達成できないですが明るく陽の光の下でのワーグナー・コンサートに接しているようなレコードです。
1975年、ボールト85歳の時の録音とは思えぬ鮮烈な演奏。本盤の第4集では、ワーグナーの醍醐味。テレビドラマでも耳にする「さまよえるオランダ人序曲」、「神々のワルハラへの入場」、「タンホイザーの大行進曲」、「ファウスト序曲」、「リエンツィ序曲」といったスケールのでっかい音楽で選曲。
AUSTRALIA COLOR STAMP DOG, STEREO 1枚組(130g), Release 1975, Stamper1/1。
抜粋のみを表示
演奏だけで物語が伝わる個性的表現。
品番 | 34-15876 |
販売価格 | 1,800 円(税別) |
セミサークル・ラベルのニッパー君の部分が四角い縁取りで囲まれ、ちょうど切手(スタンプ)のように見えるためスタンプ(切手)ニッパーと呼ばれるラベル・デザイン。番号で見ると ASD 2470 あたりから 2750 あたりまではカラー・ニッパーがオリジナル。
この、ASD シリーズのスタンプ(カラー、モノクロ両方とも)ニッパーの LP は盤材質、プレス技術のクオリティがとても高く盤の出来は、ばらつきも少なく優秀です。
[signoff]The post 指揮者、85歳。大人の春画 ― サー・ボールト指揮ロンドン・フィル ワーグナー・管弦楽曲第4集 first appeared on Classical Notes.]]>ハロウィーンって怖いお話もあるけど、ハッピーにしてしまうヨーロッパの精神は初めて知った頃には、ちょっと不思議なカウンターパンチを受けたようだった。
日本のお盆のようなものよ、と諭されてわかったようなわからないような。
そして、ハロウィーンの日には聞くクラシックの作曲家がいる。これは、わたしだけの年中行事かもしれないが、メンデルスゾーンを聞く。なぜか、説明はあまり必要ないと思う。
そして今年もこの日にふさわしい新しい CD が届いた。
ジャコメッティが弾いているピアノは 1837 年製のエラール。ショパンが弾いていたピアノと同じものです。
メンデルスゾーンの第2ソナタとショパンのソナタを両端において、無言歌とワルツをチェロ・ソナタ風に組み合わせた4曲も面白い。メンデルスゾーンとショパンはともに伝統的な4楽章のソナタを作曲している同士なので、子犬のワルツを第2楽章に見立てた新しいコラボレーション・ソナタの誕生です。
[bs_well size=”md”]するりと喉を通るお酒のような[/bs_well]Pieter Wispelwey
Chopin & Mendelssohn
FELIX MENDELSSOHN (1809–1847)
Cello Sonata no.2 in D op.58
1 I Allegro assai vivace 8.12
2 II Allegretto scherzando 5.36
3 III Adagio 4.52
4 IV Molto allegro e vivace 7.06
5 Song without Words in D op.109 4.24
FRÉDÉRIC CHOPIN (1810–1849)
Waltzes op.64 arr. Davydov
6 No.1 in D flat ‘Minute’ 1.39
7 No.2 in C sharp minor 3.12
8 No.3 in A flat 3.45
Cello Sonata in G minor op.65
9 I Allegro moderato 15.51
10 II Scherzo: Allegro con brio – 4.36
11 III Largo 3.08
12 IV Finale: Allegro 5.59
Total timing: 68.24
Pieter Wispelwey cello
Paolo Giacometti piano
Catalogue No: ONYX4078