千住真理子さんも、小憎らしい出題をしたものだ。思わずペンを手にする欲望をくすぐってくれた。
その答えは後述するとして、蓄音機で音楽を聞いていた時代。4分から5分がレコード片面の再生時間でした。この4分から5分の時間を規範にしたアメリカでは片面一曲のドーナツ盤、12インチ盤を定め、ターンテーブルの互換をヨーロッパでは規範として33回転のLPレコード、12インチ盤の両規格が出来上がります。
何れかに統一することでなく、アダプター、回転数を切り替える機構を加えることで欧米の音楽を聞けるようにしました。この時、LPレコード=ロング・プレイが生まれ、規範とした蓄音器用レコードを、スタンダード・プレイ=SPレコードと一般的に呼んでいます。それ以前にもSPという表記は出てくるのですが、材質のシェラック盤に由来し、ゴムや物資の無い戦時中はダンボールが使われたりしました。
78回転盤とヨーロッパでは今でも呼びますが、80回転、82回転など回転数の規格もまちまちでした。
LPレコードの材質は塩化ビニール。現代でのヴァイナルという呼び方は、SPレコードをシェラック盤と呼んでいた時代に立ち返った感じがします。
ふかわさんはDJなので、米国プレスの45回転に対して英国の12インチが33回転なので、ご存知の範疇でしょう。CDやデータを使う現代では起こらないことかもしれませんが、わたしが熊本でディスコのノンストップ・ミックスを初めた頃には、33回転という印がなく、45回転で間違えて、面白いミックスになった思い出もあります。
さて、1954年頃からレコードの再生方式が RIAA によって統一されることになります。
SPレコードにも大ヴァイオリニストがヴィヴァルディの協奏曲を演奏していますが、レコード裏表に合うように別々の曲の任意の楽章を組み合わせたり、ヴィヴァルディの曲をバッハと書いてあるレコードも有りました。映画『審判』で《アルビノーニのアダージョ》として紹介された音楽は、大ヒットしました。
ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集《和声と創意への試み》の12曲から、4曲を選び《四季》として、イ・ムジチがLPレコードで売りだしたのがバロックブームの火付けとなった。イタリアのアンサンブルは世界的に人気となり、オランダ・フィリップスは大きな売上を上げた。時同じく、フランスの個人経営のレーベルが世界規模で注目される。曲は《アルビノーニのアダージョ》だ。
ジャゾットは、トマゾ・アルビノーニの系統立った作品目録を作成したことでとりわけ名高い。また、アルビノーニのほかに、アントニオ・ヴィヴァルディなどの評伝を執筆したイタリアの音楽学者で、ザクセン国立図書館から受け取ったアルビノーニの自筆譜の断片を編曲したと称して、《ト短調のアダージョ》を出版した。この作品が《アルビノーニのアダージョ》として親しまれるようになると、ジャゾットの名もアダージョの編曲者としてとりわけ有名になった。
アルビノーニの楽譜は完全でなく、数葉の断片を元にジャゾットが補作したようにLPレコードの解説には当然のごとく説明されている。バロック音楽の代表曲として《パッヘルベルのカノン》と共に、レコードは大ヒットしていく一方で真相も解き明かされていく。
出版社の録音部門だったエラートは、この《ト短調のアダージョ》を『編曲者、ジャゾット』とし、アルビノーニの真作、オーボエ協奏曲やシンフォニア、ソナタの演奏と組み合わせてレコードを発売。学級肌の興味を煽った。いかにもフランス人気質を感じさせるウィットだ。
弦楽合奏とオルガンのための楽曲で、1958年に初めて出版された、この作品は、トマゾ・アルビノーニの『ソナタ ト短調』の断片に基づく編曲と推測され、その断片は第二次世界大戦中の連合軍によるドレスデン空襲の後で、旧ザクセン国立図書館の廃墟から発見されたと伝えられてきた。しかし、1990年一通の手紙で決着がつく。この作品には原作となるアルビノーニの素材はまったく含まれていなかった。それでもジャゾットは、自分は編曲したのであって、作曲したのではないと言い張ったが、現在では完全なジャゾットの創作であることが判明している。自筆譜の断片が公表されたため仕方なく、ジャゾットはバス声部のみが該当の部分だと述べており、しかもこの曲の版権はジャゾットが持っていたのである。
雄渾多感な旋律と陰翳に富んだ和声法ゆえの親しみやすい印象から広まり、クラシック音楽の入門としてだけでなく、ポピュラー音楽に転用されたり、BGM や映像作品の伴奏音楽として利用されたりした。リチャード・クレイダーマンの一大ブームに似ている。
大衆文化に入り込む素養は多く、映画音楽として注目されて、数多くの演奏家がレコードで『バロック音楽の名曲』として売りだした《アルビノーニのアダージョ》は、バロック音楽の作曲様式に倣った現代音楽ということになるのだろうか。
以前にもこのような記事を書きました。
The post バロック音楽の名曲として一大ヒットだった、アルビノーニのアダージョは、誰の作曲か? ― 贋作とされようと研究成果が創造を超えた美しき音楽。 first appeared on Classical Notes.]]>マレイ・ペライアは長い演奏活動の中でバッハの《鍵盤のための協奏曲》の演奏は度々と重ねて深い理解の成果を録音している。それから10年経過しているけれども、これらの協奏曲を聞くことは、ペライアの豊かな経験を聴くことに等しく、その彼のアプローチには新鮮さがあります。
オーケストラはアカデミー室内管弦楽団(アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ)。長年共に演奏活動を行なってきた馴染み深いオーケストラと一糸ズレることのない演奏と優れたサウンドを味わえる。
単売の余白に演奏されていた曲を CD3 にまとめてありますが、この3曲がまた、なかなかに秀逸で面白い。このままに留めないで、さらに複数台の鍵盤のための協奏曲や、ブランデンブルク協奏曲に発展して欲しいと期待している。
The post 彼のアプローチは新鮮 – バッハの協奏曲を探求しているマレイ・ペライアの演奏で聴く first appeared on Classical Notes.]]>1月27日はヴォルフガング・アマデウス・モーッアルトの誕生日。とは言え、今日は NHK-FM のクラシック番組で、プログラムにモーツァルトが組み込まれていなかったのは少し寂しかったけれどもクラシックの音楽を案内しているところでは、それぞれ面白いモーッアルト関係がレビューされていました。
わたしは、モーツァルト:ホルン協奏曲集。
米ANGEL盤(35092)アナログLPレコードのデザインです。
CDではモノーラル録音でありながらも、HQCD盤としてリマスタリング盤が発売されました。→ 【HQCD】モーツァルト:ホルン協奏曲第1番~第4番、他
英プレス盤のART盤を聴いていたら、また新たな発見と感動が増えるはず。
NAXOS盤で聞いていてブレインのホルンがこんなものなのね、って思っていたなら HQCD 盤を聴くと驚喜します。
デニス・ブレインはカラヤンのために組織されたレコーディング・オーケストラ、フィルハーモニアのホルン奏者で「ピーターと狼」などでも名手ぶりを聴かせてくれています。それだけカラヤンの信頼もあっただけに「ホルン協奏曲集」はカラヤンの協奏曲録音の中でも異彩を放つレコードでした。1960年代、1970年代と同じ協奏曲を共演する奏者は徐々に若い演奏家になっていったカラヤン。
ムターは中でもカラヤンに牽制も飛ばすほどエネルギーを放っていたので、カラヤンもこの娘は骨があると気に入っていたみたい。喧嘩セッションと言われたチャイコフスキーとムターは例外にしても、後年の協奏曲でのオーケストラに組み込まれた独奏楽器というイメージと究極に位置しているレコーディング郡の中でも最強に位置するのが、ブレインとのモーツァルトです。
筆まめだったレオポルド・モーツァルトに倣ったのか、アマデウス・モーッアルトは自作目録を作っていました。これが後にケッヘル目録の骨子になるのですがモーツァルトが自筆でカタログに書き込んだ最後の曲が「ホルン協奏曲ニ長調」。結果は未完に終わった曲ですけれども、第1楽章アレグロ(K.412)はモーツァルトの真筆です。
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