アメリカ合衆国をメインのターゲットとしてカラヤン&ウィーン・フィルは世界ツアー(この間にカラヤンだけは単身来日)に旅立ち大成功に終わり、英 DECCA は 1959年に EMI と契約の切れたカラヤンと契約。それは英 DECCA 社がウィーンフィルを掌握したことも意味した。正確には既にウィーン・フィルと専属契約を結んでいた英 DECCA が外堀を先に埋めて大将を迎え入れた戦略ととれる。このあと、1965年までカルーショーが後世に伝えるに相応しいカラヤン&ウィーン・フィルの名盤をこの六年間で製作することになる。
オペラの全曲盤の録音の合間には交響曲、管弦楽曲を録音。十数枚の LP レコードで発売され今でも優秀録音で人気だ。ベートーヴェンの7番、ブラームスの1番、ツァラトゥストラはかく語りき、モーツァルトの40番とハイドンの104番、ヨハン・シュトラウスのワルツ、チャイコフスキーのロメオとジュリエットとリヒャルト・シュトラウスのドン・ファン、ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら、クリスマス曲集、ブラームスの3番、チャイコフスキーのくるみ割り人形とグリーグのペール・ギュント、アダンのジゼル、ホルストの惑星、ドヴォルザークの8番、モーツァルトの41番とハイドンの103番、チャイコフスキーの白鳥の湖と眠りの森の美女の順で、すぐに売上に結びつく選曲だ。モーツァルトは39番があれば3大シンフォニーが揃うのに、ドヴォルザークの新世界は聞きたかったな、と思う。散漫にも思えるし、モーツァルトとハイドンの組み合わせは自然としてチャイコフスキーの《ロメオとジュリエット》とリヒャルト・シュトラウスの《ドン・ファン》は度肝を抜く。
しかし、この2曲こそにカラヤンの50歳代の全てが注がれていると聴く。
カラヤンの指揮する曲は概して大胆さや迫力にプラスして、丁寧でかつ美しい。とりわけ、ゆっくりしたテンポでの美しい旋律は、カラヤンの最も得意とする部分だ。
本盤で例えれば、怒濤のような旋律の中で、ぱっと花が咲くように美しいメロディーが流れる。この点にかけては、カラヤンは見逃さず見事に再現している。言い換えればダイナミックレンジが広いとでもいえましょうか。
WIDE BAND WITH GROOVE ORIGINAL RECORDING BY THE DECCA ED1 ORIGINAL, STEREO 1枚組(160g), Release 1961, Stamper 1E/1E。
品番 | 34-1000003 |
販売価格 | 18,000 円(税別) |
SXL シリーズは SXL 2001 から始まる 2,000 番台、SXL 6001 から始まる 6,000 番台がありますが、2,000 番台の全てと 6,000 番台前半のレコードがこれに該当します。レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「FULL FREQUENCY」と書かれている)の幅が 13 ミリメートルあり、ED4 よりかなり広い。そのため、「ワイド・バンド」とも呼ばれています。
また、ラベル上部、10時位置から右向きに「 Original Recording By … 」の文字が見られます。 更に、ラージ・レーベルの外周から約1センチのところに溝( GROOVE )があり、この3つが揃っているものを ED1 ( English Decca 1 )と呼び、SXL の最初期ラベルとなります。このレーベルが、デッカのステレオレコードの中でも、もっともプレスの時期が早く、オーディオファイルたちの憧れの的です。
[signoff]The post 怒濤のような旋律の中でパッと花が咲くように美しいメロディーが流れる ― カラヤン指揮ウィーン・フィル チャイコフスキー《ロメオとジュリエット》、リヒャルト・シュトラウス《ドン・ファン》 first appeared on Classical Notes.]]>