
ウジ虫ってのはドブのような汚えところに沸くもんだ。
どうでぇ、この世の中は。こんなきたねぇ世間にしたのは、お上じゃないのかい。
そううそぶいて急ぎ働きをしようとして盗賊は捕らわれた。
後日、同心酒井が浮かぬ顔をしている。
「あの言葉が耳に残って仕方がありません。」
鬼平はそれに答える、「盗人にも三部の道理というもんだ。あの女を観てみろ。蛇の平十郎にすてられても、もう立派に生きている。」
その後で、名言として「俺のやり方は行き過ぎだと、上から避難されるだろう。どうお裁きを受けることになるかわからないけど、今の江戸じゃ。俺がしないで誰がやれる仕事だ」に注目が行きがち。
でも、わたしはその前の女を眺めながら軽い口調で言った言葉に真の返事があると感じる。ドブのような世間でも、弱い女は汚れてでも生きているんだ。
TVシリーズで観て、原作本を読むのが好きです。クラシック音楽の作曲家の生い立ちや楽器の歴史などをデータではなくストーリ建てで説明してあるのはよく読んでいて、歴女だろって言われることがあるけど世界史も日本史も疎い。戦国モノの話も太閤記が好きな様に、史実を読み解くのより時代小説となっているのを主に楽しんでいます。
鬼平犯科帳も劇画の方はパラパラとめくってみているくらい。御宿かわせみなどを時間の間で一話づつ読んでいます。
“鬼平犯科帳第1シリーズ第3話 蛇の目”のストーリーは、ある盗賊団の頭が死んだ。これまでまっとうな(?)盗人団だったので鬼平も厳しくは観ていなかった。残された子分は、頭がこれまで溜め込んでいたはずの大金を探すが見つからない。
とうとう、新しい頭を立てて押し込み働きをするようになった。そうなると鬼平も黙って見過ごせない。事前に押し込む家を知った鬼平は、女籠に乗せて配下を潜入させる。帰り籠には大金を載せ、付き添いの装いで家の主を逃した。
それを知らずに盗賊団は押し入った。そこに、鬼の平蔵が待っていた。
鬼平は一度、火付盗賊改方の長官の任を解かれている。しばらく後に再び人につくと前以上に過激になる。盗人を問答無用に一刀両断する権利は長官だけのものらしい。その際は同心に手を出すなと叱りつける。組織全体に咎めが及ばないようという思いもあるのだろう。でも、火付盗賊改方の乱暴さは大岡越前、遠山の金さんでは迷惑がられている。
お上が悪いから悪事を働いていいという道理はない。江戸の庶民たちは懸命に生きているじゃないか。
これは今にも言えることではないかな。去年、今年、気持ちの悪い事件が起こりすぎているけど国やマスコミだけが槍玉に挙げられるのはおかしい。




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