春風駘蕩が支配したアレキサンダーソナタ第1番

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ヴァイオリン・ソナタ 第6番 イ長調 作品30-1(1802年作)

ピアノソナタ第17番《テンペスト》作品31、交響曲第2番作品36が書かれた年に、第7番と第8番の3曲セットで作曲された。ロシア皇帝アレキサンダー1世に献呈されたが代金を払ってもらえず、後にウィーンに皇后エリザベートが訪れた時に支払ってもらっている。それは作曲から12年後の事だった。
しっとりと落ち着いた楽想が印象的な、隠れたファンの多い曲です。《第7番》や《第8番》と比べると起伏に乏しさも感じられるが、優れたヴァイオリニストの手にかかると一服の名画に時の流れを含んでいるような渋味に富んだ充実感が味わえる。

1楽章 アレグロ 速く 7:14
16分音符のついた主題が個性的。オクターヴ奏法とユニゾンが多用されるのでアレグロの指定ではあるが、落ち着いた印象を受ける。
2楽章 アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ ゆるやかにより情感深く 7:07
のどかに春風が吹く大らかな雰囲気。展開はとてもシンプル。
3楽章 アレグレット・コン・ヴァリアツィオーニ 快活な変奏曲 7:37
落ち着いたムードが続いたので、快活な対比になるかと思うのの裏をかいて伸びやかな変奏曲。元々激しいタランテラだったが、クロイツェル・ソナタに転用される。華々しい効果で、この1曲で完結させるのではなく作品30の3曲に関連性を持たせることをベートーヴェンは選んだ。それによって作品30を一括りに演奏する時、華やかにして雄渾な曲想の第7番を際立たせる。勿論単独でも素晴らしく、地味ながらそう工夫がされていて、それが隠れたファンの多い曲としているのでしょう。

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