歌劇《椿姫》ハイライト 第2幕から第1場 天使のように純真な娘を、神はお与えくださった。

第2幕第1場

華やかな第一幕から、第2幕では艶やかな音楽と雰囲気に変わります。ヴィオレッタとアルフレードはお互いを求め合って華やかな生活を捨てて、パリの郊外のヴィオレッタの屋敷で静かに暮らすことを選んだのです。ジョルジュ・ジェルモンとヴィオレッタ
オペラの中核部分で、1幕と3幕を合わせた長さの中でヴィオレッタ、アルフレード、そこにアルフレードを迎えに来た父親ジェルモンが情感豊かな歌と、心通わせる深い表現で魅了します。登場人物は3人だけ、それにヴィオレッタの召使のアンニーナが加わる。

燃えたぎる心を(シェーナとアリア) – Lunge da lei – De’ miei bollenti spiriti 3:06

アルフレードがヴィオレッタとの幸福な生活に酔いしれています。

ALFREDO
Lunge da lei per me non v’ha diletto!
Volaron già tre lune
Dacché la mia Violetta
Agi per me lasciò, dovizie, onori,
E le pompose feste
Ove, agli omaggi avvezza,
Vedea schiavo ciascun di sua bellezza
Ed or contenta in questi ameni luoghi
Tutto scorda per me. Qui presso a lei
Io rinascer mi sento,
E dal soffio d’amor rigenerato
Scordo ne’ gaudii suoi tutto il passato.De’ miei bollenti spiriti
Il giovanile ardore
Ella temprò col placido
Sorriso dell’amore!
Dal dì che disse: vivere
Io voglio a te fedel,
Dell’universo immemore
Io vivo quasi in ciel.

彼女と離れていては、僕には何の楽しみもない!
もう三ヶ月が過ぎてしまった、ヴィオレッタが僕のために贅沢な暮らしや名誉、華やかな宴を捨ててから。
そこでは褒められるのがあたりまえで、皆が彼女の美しさの奴隷になるのを、眺めていたのに。
そして今は、ここの快適な暮らしに満足し、僕の為に全てを忘れている。彼女の傍にいると、僕は生まれ変わる感じがする。
愛の息吹で甦り、彼女の幸せそうな姿を見ると、全ての過去を忘れてしまう。

僕の燃える心の若き情熱を、彼女は穏やかに和らげてくれた、愛の微笑みで!
彼女が「貴方に忠実に生きたい」と言ったあの日から、この世のことを忘れ、天国にいるようだ。

そこへ召使のアンニーナが帰宅します。旅行用の服を着たアンニーナを見て、アルフレードが理由を尋ねるとパリに馬や馬車、持ち物を売却するために出かけていたと返事します。
ヴィオレッタは貴族のパトロンと手を切っていたので、彼女自身の財産を売却して生活費としていたのでした。
アルフレードは、それに気が付かなかった自分を恥じるとともに売ったものを取り戻そうとパリに向かいます。
La_Traviata_Mof2012

天使のように清純な娘を(シェーナと二重唱) – Madamigella Valery? – Non sapete quale affetto – Un di, quando le veneri – Ah! Dite alla giovine – Morro! La mia memoria 15:53

玄関先の人の気配に、ヴィオレッタがアンニーナを呼びます。訪問者は郵便配達人です。召使のアンニーナがヴィオレッタ宛の郵便物を受け取って、ヴィオレッタのところへ運んできます。ヴィオレッタは郵便物に目を通すと、来客があることをアンニーナに告げます。
程なく来客。アルフレードの父親、ジョルジュ・ジェルモンです。
アルフレードが財産をヴィオレッタに贈ろうとしていることを知ったので、どんな女だろうと会いに来たのです。
ヴィオレッタはアンニーナがパリで売りに出した財産の書類を、父親に見せます。
『あなたは全財産を手放すおつもりなのか?』
『実に立派な心がけだ!』
ヴィオレッタの心情に感じ入るのですが、アルフレードには妹が居て縁談が来ている差し支えるから身を引いて欲しいと頼みます。

GERMONT
Sì.
Pura siccome un angelo
Iddio mi die’ una figlia;
Se Alfredo nega riedere
In seno alla famiglia,
L’amato e amante giovane,
Cui sposa andar dovea,
Or si ricusa al vincolo
Che lieti ne rendea
Deh, non mutate in triboli
Le rose dell’amor.
Ai preghi miei resistere
Non voglia il vostro cor.

そうです。
天使のように純真な娘を、神はお与えくださった。
もしアルフレードが、家族のもとへ戻ることを拒むのなら、娘が愛し愛される青年は、そこに嫁ぐことになっている、あの約束を拒むのです。
私たちを喜ばせていた約束を、どうか愛のバラを、茨に変えないようにしてください。
貴女の心が、私の願いに抵抗しませんように。

VIOLETTA
Ah, no giammai!
Non sapete quale affetto
Vivo, immenso m’arda in petto?
Che né amici, né parenti
Io non conto tra i viventi?
E che Alfredo m’ha giurato
Che in lui tutto io troverò?
Non sapete che colpita
D’altro morbo è la mia vita?
Che già presso il fin ne vedo?
Ch’io mi separi da Alfredo?
Ah, il supplizio è si spietato,
Che morir preferirò.

ああ、嫌です絶対に!
ご存じないのですね、どれほど激しい愛情が、私の胸のうちにあるのかを?
私には友人も、身寄りもこの世にはいないということを?
アルフレードが、それらの代わりになると、誓ってくれたことを?
ご存知ではないのですか、私の体が病魔に侵されているのを?
すでに最後の時が近いというのを?
それでもアルフレードと別れろと?
ああ、あまりにも酷い仕打ちです、いっそ死んだほうがましです。

迫る父親と嫌がるヴィオレッタ。説得するうちにヴィオレッタの健気さに尊敬は抱くが、結婚話が来ている娘のことを思うと強気に出ざるをえない良い人物なんだけど、保守的な良識を離れることが出来ない父親の姿。ここでオペラのタイトルである「ラ・トラヴィアータ La Traviata = 堕落した女」が後悔と嘆きを込めてヴィオレッタの歌の中に出てきます。ヴィオレッタの生まれ素性はオペラの中で表立って登場しないのですが、ヴィオレッタが娼婦になって生きて行かなければいけなかったのは、江戸時代の花魁と同様な理由でしょう。

GERMONT
Ah, dunque sperdasi
Tal sogno seduttore
Siate di mia famiglia
L’angiol consolatore
Violetta, deh, pensateci,
Ne siete in tempo ancor.
È Dio che ispira, o giovine
Tai detti a un genitor.

ああ、ですから諦めるのです、
そのような儚い夢を、そして私の家族の救いの天使になってください。
ヴィオレッタさん、考えてください。
まだ間に合うのですから。
若いご婦人よ、神様なのです、このような言葉を言わせ給うのは。

VIOLETTA
Così alla misera – ch’è un dì caduta,
Di più risorgere – speranza è muta!
Se pur beneficio – le indulga Iddio,
L’uomo implacabile – per lei saràDite alla giovine – sì bella e pura
Ch’avvi una vittima – della sventura,
Cui resta un unico – raggio di bene
Che a lei il sacrifica – e che morrà!

ひとたび堕ちてしまった女には、立ち上がる希望などないのね!
例え慈悲深い、神がお許しくださっても、人はそんな女に、容赦はしないんだわ

美しく清らかなお嬢様に、お伝えしてください、不幸にも犠牲を払う女がいると、一筋の幸せの光しか残されていないのに、お嬢様のために、それを諦め死んでゆくと!

ついに要求を受け入れ、ヴィオレッタは身を引くことを決心する。
ヴィオレッタを娘のように感じる父親、ジェルモンを本当の父親のように慕う娘。

娘として抱きしめてください、強くなれるでしょうから。
まもなく彼は、貴方様の許に戻るでしょう、言葉では表せぬほど傷ついて。早く戻って、彼を慰めてあげてください。

こちらの記事もどうぞ

  • 歌劇《椿姫》ハイライト 第一幕から 心に思い描いていた夢の人2013年4月25日 歌劇《椿姫》ハイライト 第一幕から 心に思い描いていた夢の人 幸せなある日、天使のように(ワルツと二重唱) - Un di, felice, eterea […] Posted in blog
  • 歌劇《椿姫》ハイライト 第2幕から プロヴァンスの海と大地2013年4月26日 歌劇《椿姫》ハイライト 第2幕から プロヴァンスの海と大地 「父さん!」 「息子よ!何を苦しんでいるんだ、涙を拭いなさい。そして、もう一度戻ってきておくれ。故郷の海と大地が待っている」 Posted in blog
  • 言葉で表現できなくなった時、音楽が始まる2013年4月26日 言葉で表現できなくなった時、音楽が始まる 江戸時代末期と重なるので、ヴィオレッタとアルフレートの関係を吉原の花魁とお金持ちの若旦那。海と陸の美しい田舎がアルフレートの出身ですから、江戸に荷物を運んできて廓通いに夢中になった若旦那、ジョルジュ・ジェルモンはその大旦那かお目付け役の大番頭さんとしたら、日本人としては解りやすい置き換えではないでしょうか。 […] Posted in blog
  • ラ・トラヴィアータってこら、どぎゃんかならんかい2013年4月25日 ラ・トラヴィアータってこら、どぎゃんかならんかい 江戸時代末期と重なるので、ヴィオレッタとアルフレートの関係を吉原の花魁とお金持ちの若旦那。海と陸の美しい田舎がアルフレートの出身ですから、江戸に荷物を運んできて廓通いに夢中になった若旦那、ジョルジュ・ジェルモンはその大旦那かお目付け役の大番頭さんとしたら、日本人としては解りやすい置き換えではないでしょうか。 […] Posted in blog
  • ヴェルディ作曲 歌劇「椿姫」から2013年4月23日 ヴェルディ作曲 歌劇「椿姫」から 日本に黒船が来航した頃、ヨーロッパのオペラ界事情はベルカント・オペラの二大巨匠、ベッリーニとドニゼッティが世を去っていた。ロッシーニはフランスに住んでいましたが興味はオペラではなくレストラン経営に夢中。ヴェルディが世に出る時期が到来していたのです。《椿姫》を作曲した時は40歳で、劇場支配人や出版社にも発言力を持ち、自分の意志を通せるようになっていた。当時も今も、劇場が上演演目 […] Posted in blog
  • ヴェルディ作曲 歌劇《椿姫》考2013年4月24日 ヴェルディ作曲 歌劇《椿姫》考 彼はピストルを握り、書斎へ入ってドアを閉めた。数分後、書斎の中から大きな音がしたので心配した友人達が中へ入ってみると、そこにはピストルを片手に立ち尽くしたデュマの姿があった。彼はこういったという。「驚くべきことが、起こった。私としたことが、撃ち損じた」と。 […] Posted in blog