どの音楽でも、裏方の人の努力が結実する盤は話を聞くだけで楽しい。

OS25126

まずは音を出して、音を出さないことには音楽は始まらないのよ
メロディーなきメロディーを奏で、道無き道を行こう

超優秀録音で四日間掛かるオペラの最後を飾るアリアは圧巻。ライヴではソプラノの声量の衰えが出ちゃう所で、レコードでこそ完璧に聴ける。レコード録音しの金字塔であると同時に、万全のスタジオ・セッションでの録音はクラシック音楽ファンの待望だった。ジークフリートのラインへの旅、葬送行進曲と聞き所はいっぱい http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e717434.html

現在はDVDで毎年のように指環がリリースされているけど、ショルティとウィーン・フィルのプロジェクトは、1958年から1966年まで、あしかけ8年かけて全曲を録音。ステレオで、スタジオセッションという最初の試みでした。録音機材もその間に変わっていて、4部作は「ラインの黄金」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」、「ワルキューレ」の順に制作されました。ワーグナーのオペラは「ラインの黄金」、「ワルキューレ」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」の順番なのだけど、制作順のポイントは主人公のブリュンヒルデを歌うソプラノの声への心配。10年間の間に、声が出なくなった場合はすべてがパァになる。ポップスのプロジェクトではそこまでは考えないことだけど、オペラの録音では気にしないでは置けない重大事。そこで、ソプラノが30分近く一人で歌うアリアのある、「神々の黄昏」を先に録音することになった次第。

録音機材の変化は、後半の「神々の黄昏」と「ワルキューレ」では、登場人物の動きはミキシングで動かせるようになりましたが、「ラインの黄金」と「ジークフリート」では、歌手自身が日本のマイクの間を移動しながら歌っています。テープレコーダーはアンペックスからスチューダーへ、テープはEMIからスコッチに変わっている。録音の時のイコライザーカーヴも変わっているし、最後にはドルビーシステムが何よりも早く導入されている。

それでも歌手、オーケストラ、録音場所、スタッフに変動がなかったことは『金字塔』プロジェクトを結実させたい、と誰もが努力したんですね。全4部作で人気が高いのは『ラインの黄金』と『ワルキューレ』でしょう。オーディオファイルが身震いするのが、『ラインの黄金』のラストでの雷鳴と虹がかかる場面。雷雲が晴れて虹が架かっていく様子が音を聴いているだけで感じられる。ワーグナーのスコアがそうであるのは確かですが、マイクの録音レベルを徐々に左右の端から上げることで左右に大きく開いていた音が徐々に集約されるように聞こえる。デジタル録音では見過ごされることだけど、マイクの位相特性の違いが干渉することを逆手に使った。『ワルキューレ』の醍醐味は、『ワルキューレの騎行』でしょう。ハイライト盤の面白さは、録音機材の変化にも注意して聞く楽しみだ。

こちらの記事もどうぞ